よい調律とは・・・

人それぞれ、調律師もそれぞれという風に技術者だから、当然ある一定の勉強をして資格を
身につけているわけですが・・・・・・・・?調律し終わったあとの音に違いが出てきます。
なぜ?
勿論キャリアによる違いもあるとは思いますが、4度や5度音程の秒間に生まれる音の唸りを正確に
割り振り(中音37A音からオクターブに至るまで)全鍵に広げていく通常の過程に個人差が出てきます。


1.平均率『古典やチェンバロは除く』で調律する。
2.4度、5度,長3度の唸りを正しく整えていく。
3.オクターブ、和音ハーモニーを聞きながら音階をつくっていく。
4.ユニゾンに艶を出すように音の幅をつける。
    などが調律師としての基本的な調律方法だと思いますが、ピアノの弦を保持してあります
ブロック板とチューニングピンとの硬さや、弦を押さえてあるベアリングとの間に粘りがあるかどうか
、弦(ピアノ)が作られてからの年数(年代によって弦が温湿度変化に敏感かそうでないか)
弾かれる方のタッチの強さや使用時間はどうか、調律する弦の上げ幅、取り方、合わせ方が正しいか
狂っている音に対してどの方法が適切か、という調律法の選択センス(私が思うに今までその調律師
さんが経験してきた中から出るものだと思います)等によってかなりの違いが出る作業なのです。

まず調律に取り掛かる前に
1.調律する前の状態(ピッチ、ユニゾン、響き)を把握する。
2.整音の乱れと区別(音律による狂いを正確につかむ)
3.(1.2)からピアノ線の状態や使われていらっやる環境(使用頻度、温湿度の影響)も把握する。
4.そのピアノのピアノ線、チューニングピンの保持力(ピアノによって1台 1台違う)を確認。

以上が、調律する前に調律師に求められる(ほかにもありますが)最低必要事項です。
次に大事なことは、
1.チューニングハンマーでピアノ線を止めてありますチューニングピンを回す際にピンの硬さ、粘り
  保持力などを瞬間的に手に感じることです。
2.手に感じたものを理解してピンに逆らわずに丁寧に音を作っていきます。
3.線1本ずつ、微妙に違う狂いに対してピンの上げ幅(ピアノ線には約90Kgの張力がかかっている
  為、時間が立つにつれ自然に変わって行くのでそれを予測した分、止めたい位置より高めの音に
  一度ピンを回して上げておきベストポイントまでゆっくりと下げていく)をそのピアノの性格
  も踏まえた上で、1本ずつ合わせて実施する。
  コンサートの調律ではベストポイントが変わってきます。それはホールの響きやピアノの音場
  や設置位置、その日の演奏プログラム、演奏される先生のコンディションも取り入れて、音が
  歌ってくれるようなユニゾン、オクターブのベストポイントに致します。


  ピンを回す力や技術は調律師の腕力やセーブ加減など手の使い方で個人差がつきます。
  実はここが”決めて”になると確信致します。いくら平均率の正しい知識があっても希望する音に
  なるまでに人の手によって行う為、最終的にすばらしい音に調律ができるかどうかはこうした
  隠された部分になぞがあると思います。

  私も20年ほど前にヤマハテクニカルアカデミー(調律学校)に入学したころは、理論と実習の
  繰り返しでこういったことより基礎的な技術を身につける事で、あまり気になりませんでした。
  しかし日々良い調律を追い求めていくうちに、このによる技術の良し悪しで音楽的な
  すばらしいと思われる調律を左右する結果になるという事がわかってきました。